個人再生と退職金
その1 個人再生と退職
個人再生をしても解雇事由には該当しませんし退職する必要もありません。ただ勤務している会社等から支給される退職金が破産者の財産とみなされます。
ご相談の際、今自己都合で退職した場合の大体の退職金支給予定額が分かっていれば適切なアドバイスが可能です。
その2 財産とみなされる退職金の範囲
退職金は将来の債権である場合が多いです。破産者が確実に手にできるかどうか分かりませんし、また退職金債権が差し押さえられた場合でも債権者に配当しなければならないのは4分の1のみです。
従って、個人再生認可決定時に既に破産者が退職していたり退職がまじかでしかも退職金の支払いをまだ受けていなければ退職金の4分の1が財産とみなされます。
しかし、退職がまだ先である場合には退職金が確実に受領できるか不明ということもあり、個人再生認可決定時に自己都合退職した場合に支給される退職金予定額の8分の1を財産とみなす裁判所が多いようです。
なお、確定給付企業年金(確定給付企業年金法34条)や確定拠出年金(確定拠出年金法32条)、厚生年金基金(厚生年金保険法41条、136条)は全額差押禁止債権ですので財産とは見做されません。
その3 財産となる退職金がある場合の流れ
既に退職していたり退職がまじかだったりして4分の1が財産とみなされた場合には再生計画における支払総額は多くなりますが個人再生認可決定後に受領した退職金から4分の1を債権者に支払うことができる場合が多いでしょう。
問題はまだ退職が先で8分の1が財産とみなされた場合です。
金額にもよりますが再生計画における支払総額は多くなるのに毎月の給与は限られているのですから再生計画が認可される可能性に影響が出てくるでしょう。
その4 個人再生認可決定時に既に退職金を受領している場合
退職金の支払いを既に受けている場合には現金預金となりますので退職金を受領していない場合と比較すれば多くの金額を債権者への支払いに宛てることになります。従って、個人再生するのであれば退職前にしておかないと退職金もほとんど手元に残らないことになります。
退職金が出れば借金を全額返済できるという思いで無理をして支払いを続けておられる方もいるでしょうが、退職金は自分だけのものではなく永い間自分を支えてくれた家族の今後の生活のためのものでもあるのですから退職前に個人再生の手続をすることも考えていいと思います。